「三体」を読んで
あかん。もう9月が終わるというのに全然アウトプットが出来ていない。本の備忘録も10冊くらい溜まっている。時間を見つけて少しずつ遅れた分を取り戻していかなければ。
さて、昨日は中国からのSF小説で日本でも大ヒットした「三体」を読んだ。
物語は文化大革命で改革派に父を殺された葉文潔が、宇宙人との交信を試みる紅岸基地に収容されるところから始まる。そこで宇宙人=地球と唯一交信できる恒星と交信することに成功し、その世界を三太陽が世界の秩序を決する「三体世界」と名付け、彼らに地球の侵略を容認するメッセージを送る。
一方狂淼というナノファイバーを研究する科学者が物語を進めていくが、彼は自分の研究が何者かに目をつけられ、命の危険が及ぶことを危惧している。目の前にカウントダウンの点滅が、自分にしか目に見えない形で見えたり。そのため、その謎を解くべく警官史強などと協力しながらゲーム「三体」を解いていくことになる。この「三体」は葉文潔が地球の反科学派を集め、知や人を結集するために作ったものであった。
Twitterで誰かが呟いていたが、人類が負けるSFはこれが初めてだ。これまではSFにはディストピアや侵略要素が強かったとしても、最後は秩序や道徳を持つ現代世界が勝利を掴むものが多かったし、何より結局「三体問題」は解決しないために全てのシミュレーションはバットエンドで終わってしまう。どちらかというと未知の知能に対する人間の抵抗の物語だと思う。
三体世界を作る派閥の中で最も原理主義的な「降臨派」というように、この異星の恒星人はまだ得体の知れないものでしくてもほとんど神として扱われている。人間の科学の発展の歴史も同じで、ルネサンスの印刷技術やプロテスタントの資本の蓄積など、神が作り出す世界にいかに人類を発展させられるか、で人間が報われるかを測る部分がある。
陽子とか加速装置の話とか分からないことばっかりだけど、とりあえず「科学ってまだ先があるんだ!人間はまだまだやれるぜ!」的な進歩主義的な雰囲気にマッチした作品であると思う。少しでも科学をかじっているならば、「三体世界」という未踏の地があり、それに少しでも近く一歩に自分が貢献するんだという感覚を得られるのかも知れない。
でも450ページは長かったなぁ。自分はどちらかと言えば文系だから、まぁ次の作品はいいかなぁ。