OldLionの備忘録

年老いたライオンは錆びない。狩りを続け、振る舞いは日々深みを増していく。 いつまでも自分を忘れず、狩りを忘れぬライオンでありたい。 そんなライオンになるための日進月歩。

ソーシャルメディアの生態系を読んで①

Black lives matter運動は、黒人運動の過剰な盛り上がりの中、白人警官により黒人が銃殺されたことを引き金に生まれたソーシャルメディア上の運動だ。これの特徴は従来の黒人対白人という構図ではなく、人種差別という共通のモメントに反対する運動として急速に拡散した運動だった。

MeTooのようなものもそうだろう。元々は女性が男性から受けたセクハラを訴える旗印だったが、結果的には、セクハラかいなかが問題になったのではなく、女性が声を上げにくい現状に反対する運動として世に広まっていった。

ソーシャルメディアの生態系」が指摘するように、ソーシャルメディアには細胞活動を模した運動が生まれる。それは細胞構造・代謝・成長と複雑性・ホメオタシス(内部環境の調和を保つ)・刺激への反応・繁殖・適応 などに列挙される。そしてそこでやり取りされる言語がミームだ。ミームは共通の文化的な認識を共有した時に伝播していく表現や言葉である。

上記の言葉が広がったのは、特にこの刺激への反応に近い。外的な刺激、トリガーが生まれた時に、己を守るための自己防衛か拒絶かを生命は選択し、そして代謝するか吸収するかすることで最終的には調和を保つ。このような自律的に発展する様態を著者はソーシャルオーガニズム有機体)と表現した。

 

もう一つ言及しておくべきは、このソーシャルオーガニズムが、ホラーキー(お互いに独立した組織活動を自律的に行いながら、全体に属している円状構造)として機能しているということだ。これは独立した円状の中でインフルエンサーとフォロアーが存在し、一つのホメオタシスを形成したミームは、他の全体組織にも影響を及ぼすということだ。例えばインドネシアでアホック州知事が逮捕された時も特徴的だった。反対派それぞれが自分の独立したネットワークに働きかけ、それが全体に大きな影響をもたらし、デモが大規模化した。それはアホック対体制派という構図ではなく、宗教が政治に介入してはならないという宗教分離というより深いミームに結びつくことで伝播していったのだ。

 

(続く)