アプリを開く習慣に疲弊して、「アンチホーム画面」になっている話
最近マーケティングに携わりながら、生活をしている人の行動が変わり始めたな、と思うことが多々ある。
何を隠そうアプリメッセージをアドバイスしている僕自身が全てのアンドロイドプッシュ通知を停止したのだ。
だいぶ常識になりつつあるのだけど、アプリマーケティングを実践する上では、習慣化させることが最も大事である。故にリテンションレート、そしてさらに上位には起動回数の向上がやはり大事である。現にウマ娘がヒットした理由を今日Markzineで読んだけれど、起動回数が高いファン層を取り込むにあたって、美少女ゲームというカテゴリーで内的トリガーを誘発し、競馬という中毒性で起動回数を上げる仕組みがよく設計されている。
その時じゃあ、何に戻ってくるのかのかというと、それはホーム画面に配置されているアプリである。僕の場合はYoutubeや瞬間日記で、ほぼ毎日起動している。逆に、ホームに置いて「おかない」アプリは2軍で、だんだん忘れていってしまう。だから起動頻度が高いジャンルでこそアプリが必須だし、2軍を1軍に引き上げる仕組みがプッシュ通知だ。もしくは、Facebook広告などの、ホーム画面に既に配置されているアプリ内での情報接点の作り方はバカほど大事になる訳である。
ここまでは前提の話。このホーム画面奪い合い合戦に最近疲れてきた、というのが本音だ。今までは有益な情報として受け取っていた、マネフォの通知。気づけば、通知が来ないか1日に何度も見てしまっている。要するにスマホに依存するようになってきているのだ。
ウザいから止めるのではなく、自覚的に沼にハマっているから、沼から距離を起きたい、っていう体からの黄色信号が出た気がするのだ。心のキャパをいらん時間(僕だと家計簿チェック・YouTubeチェック)にさきすぎ、という警告。
社員のバーンアウト症候群・燃え尽き症候群ならぬ、アプリの沼から抜け出せない症候群とでもいうべきものだろうか。スマホを5分に一回くらい開きたくなってしまうし、開くと必ずアプリを開きたくなる問題。その結果、そのアプリに脳内のキャパが結構支配される。
コロナが明けてきて、外からの刺激のありがたみを感じるからこそ、この刺激が、果たして自分にとって必要なものなのか、実は距離を置くべきものでないかは、問わなければならない気がする。プッシュ許諾率、最近低下傾向なんじゃないかな。
アトピーの治し方 を読んで
誰の著者かチェックし忘れてしまったけど、アトピーの本を読んだ。
以下のリンクにもあるけど、アトピーを結構社会学的に捉えているポイントが面白かった。
- 本来ステロイドを重症度に合わせて処方することで完治させることができる(ただし、塗る作業など、患者さんにある程度頼らざるを得ない)
- 1990年代にステロイドバッシングが始まったことで、今までステロイドで治療していたものができなくなってしまった
- その結果アトピーに市場が生まれた。アトピーを直すための脱ステロイド療法が蔓延した。木酢湯や食事療法など、様々な方法が生まれた。だが、医学的に根拠がない治療法で、ある種の信仰としてステロイドのカウンターパートになった。
- プロトピックなど、即効性がなくても効果が全体的に期待できる薬剤が生まれ、2000年からは新しい医療法が多く提案されることができる。
日本では小児喘息の死亡者がゼロになるなど、アレルギー対策で大きな進歩をみられる領域が沢山ある。だが殊アトピーについては、「医療関係者が自信を失った」点に特徴がみられる。医者も根拠に基づいて療法を提案するが、お客さんの評判がついてこないと事業が運営できない。だから根治ができるような療法は積極的にすすめづらくなる。結果として「アトピーは治らない病気」になってしまった。
当時は脱構築・ポストモダンと言われる通り、少なくとも既存の価値観をなんでも再転倒することが正義だと思われる時代だった。建築でもカルチャーでもなんでも。だが、それが絶対的な権力の砦である医学に入った事例は初めて聞いた。
もちろん、僕もステロイドを使ってアトピーが悪化したことが何度もある。だけど、正直かなりコントロールが難しいし、根気よく薬を使い続けるのは相当しんどかった。だけど、それが果たして医者の責任だったかというと果たして疑問だ。
市場が、「医療」や「教育」など権威のおこぼれとして生まれていく、という仕組みは非常に興味深い視点だと思った。ちょっと穿った見方だけど...
ビジネスも人生もグロースさせる コミュニティマーケティング を読んで
以前ビジネスコミュニティについての備忘録を書いたけれど、今回はそれについての気になっていた本を読んでみた。
https://dachilion.hatenablog.com/entry/2019/08/07/025133
著者の小島さん曰く、コミュニティは「誰もが知りたい」ことがあって初めて成り立つものだそうだ。だから熱量の高い最初の何人かを対象にスタートしないと、コミュニティとして広まっていかない。
本著の帯にもついているけど、「ファーストピンを狙え!」と書いてあるとおり、関心の輪が広がることで、普通の営業ではリーチできない人たちにもリーチできる可能性が出てくる。なので、成果測定はできないけど、営業効果がある。
本著で取り上げる3つの原則は以下の通り。
- オフラインファースト
- コンテキストファースト
- アウトプットファースト
特にアウトプットが出ないと、拡散もできない。コンテクストについてはいくらいいトピックだとしても最初のコンテクストをブラしてはいけない。拡大の法則と、熱量の高いメンバーをリテインする法則どちらも必要。(雪だるまのようなもの)
最近オンラインウェビナーの運営に携わることもあるのだけど、参加者との異常なイントラクティブ性がとっても高い。コミュニティに入っているメンバーが友達とZoom飲みするような感覚で共有セッションを開いて、それが他のメンバーにも開かれているような...そんなコミュニティがあれば良いよね。
自分もインドネシアでソーシャルリクルーティングのエバンジェリストみたいな立場だったけど。こういう風にコミュニティをテコに認知を拡大しようってのもアリだったよね。他人の巻き込み方だね。
掏摸 中村文則著 を読んで
中村文則の作品は「教団X」より2回目。
本作品の書評でいいなと思ったものを末尾に載せているのだけど、この著者は徹底的に「悪」と言うものを考察しようとしている。
主人公はスリを行うことで、常に木崎の支配下にいる。そして木崎の支配下に入ってスリを繰り返すことで初めて「塔」が消えてしまう。それは子供に対して自分が生殺与奪権を持ち、悪としてのスリルを味わうことによるものだと思う。徹底的に悪に染まろうとするなら善を覚えていなければならない。相手の苦痛に同情し、親にも思いを馳せそれでもなお更なる苦痛を与える。そんな奪う立場に立つことで初めてあの塔は消えていく。だとすればその塔は、倫理的に超えてはいけない、超えられないと思っているそびえ立つ存在。でも実は超えてみたいとも思ってるもの。そんな甘美さと崇高さ・恐れを伴った存在なのかな。
本書ではヤーヴェの子供の件がすごく好きなくだり。ヤーヴェの管理下にあった子供を完全に支配し、全ての人生での出来事を決めてその通りに行動させる。完全なる管理だ。その時、子供はヤーヴェにたいして崇高よりも恐れを抱くだろう。崇高さに近い尊敬と恐れ。
「藻屑蟹」とか「海辺のカフカ」では、決して抗うことができない権力が現れて、それに流されていく弱々しい人々が映されていた。だけど本著ではその絶対的な権力に抗うことができ無いほどに誘惑されてしまう姿、そしてそこを垣間見てしまう姿が特徴的だったな。それくらいの方が現実の僕たちにリアリティに促しているし、エンタメとして面白い。
でも個人的には「臣女」や「ハリガネムシ」のような徹底的な受け身、の方が最後の瞬間での美しさみたいのがあるな。
http://bookjapan.jp/search/review/200911/houjo_kazuhiro_01/review.html
自分のことは話すな 仕事と人間関係を劇的によくする技術 を読んで
誰かと雑談をしようと思わない、雑談をする理由がわからない、と言うタイプが僕だ。
なので読んでみたのだけど、あまり得るものが少なかった。
本書は自分の話を延々聞かせたとしても相手との距離が縮まる訳ではないから、話をきくというスタンスでいよう!って話なんだけど、
読者にも自分と同じくらいのコミュニケーション力を前提にしているので、相手の話をうまく質問できる前提に立っている。だけど多分これはトレーニングが必要なので、読んだだけでも全然ピンと来ないんだと思う。
本著では相手に好印象を持ってもらう「ポジティブメッセージ」を伝えてうまく相手から情報をひきだしたり、相手が聞いてもらいたいことを考えて発話するとか、なるほどね、確かにできたら俺の人生よくなっているんだろうなぁってことが書かれている。
だけどあまりに理想だし、そもそも相手を知りたいと思えない自分はどうすればいいの?って思った。結構こう言う人多いんじゃ無いかな。
あと、初対面の人なら仲良くできるけど、ある程度仲良くなると今更話が出せない問題に対する対処法知りたいな。。。出身とか食べ物とか、どうでもいい会話や冗談がとか言わないよね。
ロジカル・セリング―最強の法人営業 を読んで
営業を実践する時に、まず何を考えるか。普通のマネージャーだと、商談数×クロージング率(期間内)で計測しようと思うのでは無いだろうか。
だけど、実際には、インサイドセールスとフィールドセールスでかなり役割が変わっていることがほとんどで、期間内のクロージングなんて無理、と言うのがほとんどだと思われる。ABMとかの概念も流行ってきたけども、ターゲットとしたクライアントのクローズ率とかの方が期間で切るより大事なことも多いように思う。エンプラ企業取れたらそれで全部解決だから。
本著では営業が打率をあげるのには2つの壁が存在すると言う。それは「悩みの壁」と「人の壁」だ。
この前者の「悩みの壁」は、根本課題を捉え、的確な経営課題・業務課題を読み取ることができないことである。これはコンサルティング力、そして場数を踏むことでしか解決することができない。
次に「人の壁」である。相対している人が向き合っているのが経営課題・業務課題どちらなのか、予算が振り分けられているのはどちらか。など。
特に前者の段階から営業を一律でやろうとすると的確な課題ではなく断片的な課題しか把握できない場合が多い。このため、アカウントとソリューションは最終的には誰か一人がコーディネートし、相手との期待値調整ができるようにならねばならない。これを「提案マネージャー制」と言う。そしてきちんとした期待値調整ができているか、BANTで適切な人間にアプローチできているかなどは、SFAでチェックを行い、マネージャーから適切なステージ管理を行うのが良いと言う。(打率を上げる)
営業はクロージングするのが仕事ではなく、「商談を次のステージに進める」ことにあると言う。だからこそチーム一体となってこれらの壁を超えていくことが求められるようだ。
Hooked ハマるしかけ 使われつづけるサービスを生み出す[心理学]×[デザイン]の新ルール を読んで
Hookedモデルについて、以前読んだのに書評にまとめていなかったので、今読んでいく。Hookedは人間の習慣をフックにして、ユーザーのサービスへの定着を促していくマーケティング手法だ。
例えば色んな指標が存在するのだけども、本書にも紹介されているのが、Evernoteのスマイルカーブが非常に有名らしい。ユーザーは日数が経過するほどにまずは有料登録率が低くなるけど、再度その割合は上昇する。つまり淘汰がされた後のエンゲージメントに特化したマーケティングは有料転換などラストワンマイルで有効であり、同時にこのTTVを短くできればその分離脱数が下がったり収益にも良い影響を与えられる。
https://medium.com/@saidur2/the-smile-graph-a57b9a918d9b
この定着のためにユーザーは4つのプロセスが動機付けに必要になる。
- トリガー 動機付け
- アクション 行動
- リワード 報酬
- インベストメント 投資
トリガーには、外部的な動機付けもあるが、内部的なものもある。写真をシェアしたいと言う要望がトリガーになってApps Storeなどで検索を行うことができたりする。また、リワードは実質的な対価でなくても、なんとなく自己承認された、と言うようなものでも良い。B=MATと言うフレームワークにある通り、行動を起こすためにはMotibation/Ability/Triggerが必要だ。
ただ、あくまでも「ユーザーにさせたいこと」ではなくて「ユーザーがしたいこと」に沿って体験を設計してあげることが大事。例えばネイルアプリなどでは女子が店選びをするなど消費行動する行動原理をカテゴリー化し、「物理」「感性」「妄想」フィルターに沿って行動する、と定義づけた。
こんな風にそれぞれのペルソナに当たる人たちがどんな行動・判定軸で各ステップを踏むのかを考えてみても良い。
また、それぞれの設計も大事だけど、例えばこの習慣付けに加えて、もう一つの軸、「期待値設計」についても必要。同じようなサービスを検討した時に、決定的にバリューを感じるモーメントを作れるか。感動を作れるか。それをどこで作るか。
そこらへんのところは下によく纏まっている。
https://note.com/kengoiwt/n/n20001d5b3133