OldLionの備忘録

年老いたライオンは錆びない。狩りを続け、振る舞いは日々深みを増していく。 いつまでも自分を忘れず、狩りを忘れぬライオンでありたい。 そんなライオンになるための日進月歩。

SHIFT:イノベーションの作法 を読んで

本著を読んだのは去年インドネシアにいた時。

その時はBizdevの責任者だったわけで、今みたいにProduct Marketingやイノベーションに関わるとわかってから読むと全然見え方が違うのね。すごく面白かった。

本書で言うShiftとは、商品や機能の既存のバイアスを壊し、適切な設計可能なベクトルの大きさで商品を設計し直すことを言う。この時にはBTC(Business/ Technology/Customer Experience)の3つの「全て」で競合優位性を持てるような設計をできるようにならなければならない。今までは例えばT(技術)だけでよかったかもしれないが、イノベーションが技術部門で進んでいくが故に、単純にスペックだけでは勝負できなくなった。「何を・なぜ作るのか」と言う発想が価値を持って流通するようになる「発想資本主義」が現代なのだと著者は言う。

「β100」「不確実性の4つのレベル」などの概要は他の人のまとめ書評に譲るとして。僕がこの本で気にいった点は2つある。

 

①ストラクチャードケイオス

経営陣は事業をストラクチャーで捉える一方、イノベーターは事業をカオスで捉える傾向にあり、両者はトレードオフにならざるを得ない。だが、だからこそイノベーターはストラクチャーに可能性を捉えるが、バイアスを方向転換できるだけのケイオスの発想力を持たねばならない。

具体的にイノベーターがやるべき仕事はI/Mi/Me(Innovation Thinking/Internal Marketing/ External Marketing)の3つの活動になる。

 

②不確実性を肯定していくこと

イノベーションを生み出すためには、「プレゼンの1週間前になんとかプレゼンにする」のではなくて「発想した初日からGo/NoGoの意思決定ができること」が重要だと著者は言う。(バイアスを構造化し、パターンを壊してみて、強制発想する)

ただ、この際にはただのコンセプト設計なので、考えられる自由度が高くてもリソースが少なくなってしまう。だから、ペルソナは明確に(最初の100人をターゲットにするF100,次のターゲットのA100を定義するなど)しなければならない。

社内説得を行うには次の3つの原則が必要だと言う。①パッションを持つ②ピラミッド型(結論から)で話す③階段状に合意を取り付ける

不確実性を意思決定者と共有し、段階的にその溝を埋めていくこと、この方法で社内説得を行っていく。ディシジョンマネジメントと言う分野も決定的に大事である。

 

③Promotionの方法

プロモーションの方法は実は一発で心を撃ち抜くスナイパー型の製品開発が多いが、網羅的に製品を配置するハンター型や、より広範囲に配慮した製品を設計するフィッシャーマン型などがある。デザイン・ファンクション・ストーリー+利用シーンの4つの軸での顧客体験を網羅的に判定し、市場に出す際にはそこにこぼれが無いように設計する。

 

上記は現場サイドに大きなインサイトを与えてくれる。人材採用の基準や、ペルソナの切り方、意思決定者とのディシジョンプロセスの組み方、さらには製品の4Pの設計の方法など。これをShiftと言う大きな文脈から捉え直すことで、イノベーターと言う仕事を目指していく意義を感じることができる。

 

https://tokumoto.jp/2019/07/31529/

発想を事業化するイノベーション・ツール を読んで

本書もイノベーションツールの文脈で読んだ。

具体的な手法やステップが網羅的かつ詳しく説明されていたので、非常に参考になった。僕の今の問題意識は、BtoBにおけるイノベーションの発見方法だ。さてそれを行うためには、どんなプレゼンを経営陣に行うべきか?

本書で最も参考になったのは、やはりジョブ理論に関する記述である。

人間の行動を「ジョブ」(達成しなければならないタスク)として記述し、それに対する「結果期待」(どんなアウトプットが欲しいか)を整理する。

「発見的再定義」というプロセスでは文字通り、特定のジョブ(JTBD)に関して、それに関連するジョブ・及び結果期待を全て記述する。(可能ならば要素同士の関係を図解し、対応関係を洗い出す。)それを全てステートメントとして優先順位をつけていく。


事業的な優先順位付け判定はRICEだったりとかが有効だとしていたが、例えば本著では以下の3つの優先順位判定軸を提案していたりする。

1. ステートメントが解決できる可能性(技術的に)

2. 実行しやすさ(社内的(Vision的)に通しやすいか。エビデンスはあるか)

3. JTBDに及ぼす影響(顧客の事業インパクト)

これらを軸にどれに着手すれば良いか決めていけば良さそう。

 

そして次には、着手することになるJTBDを「ジョブスコーピング」などの手法や「9つの窓」のフレームワークを使って、そのジョブが過去や未来のトレンドの中でどんなシステムを通じて解決されてきたかを整理する。
ジョブスコーピングでは、着手するJTBDに関して、事業の流れの中で再定義を行うことになる。

ここまでやって初めて、さて、どんな解決策が良いか...??と考え始めることができる。PMMの仕事は極論このマッピングに尽きる気がする。ソリューションではなくて優先するべきジョブを特定しなければならない。

 

その他にも超えなければならない観点は沢山ある。例えばジョブを解決することによる市場規模はどれくらいなのか。それが長期的に財務会計でどのような影響を及ぼすのか、など。そこらへんについても追求していろんなやり方を検討しなければならない。

 

101デザインメソッド ― 革新的な製品・サービスを生む「アイデアの道具箱」を読んで

今プロダクトマーケティングに携わっているので、本著のようなアイデアを発見したり、整理する手法をまとめてある本は興味があって読み出してみた。

結論、すぐ使えそうな方法論はあまりなかった。本著ではイノベーションを実行するための方法論がたくさん書いてあるけれど、実際にやってみないとわからないものばかり。あと、日本向けに書かれたものだと、使い方が詳細に書かれてて実践よりだけど、

そうでもなくて。

いくつか使えそうなものだけピックアップ。

- トレンドマトリクス 過去→未来 に向けていくつかの側面からトレンドを把握する

- From To 調査 トレンドがどのように変化するか記述

- オポチュニティマップ 市場を2つの側面から切り取り、競合のポジショニングをマッピングする

- POEMS調査 観察調査を人(People)物(Object)環境(Environment)メッセージ(Message)サービス(Service)に沿って分類する

- ERAFシステム図 エコシステムの相関関係を対象物・相関関係・フローなどの観点から分類する

- 記述的バリュー・ウェブ

上記らへんは今後使っていけそうなのかな。

特にシステムの全体構成を図解するという試みはいつかやれるようになってみたいな。

ソサイエティ5.0の構想

内閣府からソサイエティ5.0が提唱されていたので、取り上げておきたいな。

狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもので、第5期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱されました。 

 概念としてはデータの集積化を行うことで、人間としての最適解を見つけていく、ということなのかな。例えば自動運転とか、農業分野とか、工業分野などもAIを使って最適な技術ノウハウに誰でもアクセスできるようになる。

ネットワークスライシングという言葉があり、これはデバイス毎に配信するデータ形式を最適化する状態、もしくはグラントフリーやエッジコンピューティングなどを使って、シームレスな情報の共有を進めていく。

今や 韓国のSKテレコムやファーウェイでは5Gの提供がスタートし、日本でも前倒しで始まりそう。大事なことはそれをどう活用していくか、それぞれの用途に応じて最適化できるようになることなんだね。

 

でも国がやる前に、どこかの事業者が手を上げないのかな...Googleがとっていっちゃうで。

https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXMZO4913715029082019000000?channel=DF180920184351&page=3

https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/index.html

ネクストシリコンバレー 「次の技術革新」が生まれる街 を読んで

インドジオ・プラットフォームズにFacebookが出資すると発表された。

インドに展開している食料品店ジオ・マートなどで決済が利用できたり、音楽をダウンロードができたりなど、いわゆるスーパーアプリ展開をFacebookの持つWhatsappなど通じてできるようになるとか。

 

この「ジオ」がインドのデジタル化を推進した立役者・英雄だったことは、本書を通じて知っていた。当時ボーダフォンが席巻していたインド市場でデータ利用料が1_10の従量課金プランを提案。これにより一気にシェアを握った。

 

インドのモディ首相はデジタルインディアを進めるために、高額紙幣を全て撤廃。その結果QR決済が今全国で異常な速さで浸透が始まっているという。このモディ首相の後ろ盾でジオは躍進している。今インドは、とにかくいろんな手を使って、デジタル化を進めている。中心都市はハイデラバードだ。

 

SwiggyやZomato、Snapcartなど、インド発の企業が勢いを増していて、その中でも注目はやはりInMobiかな。という感想。この企業、ネットのネイティブ広告メニューを色々持っているのだけど、端末と連携して「ロック画面」に広告を表示するソリューションを持っている。プッシュ通知でいいやんって話もあるのだけど、よく見たら広告がロック画面全体に表示されていたり、動画を載せられたりできる。うーむ。これだと許可をされないと配信できないプッシュ通知より全然バリュー高いな。

 

ソフトバンクも出資していて、日本にも展開しているのだけど、もちろん日本で単純にできるとは思えない。けどインドではありえるのだ。もしかしたら端末を購入する代わりに端末の料金を肩代わりするとか、そんなモデルになるのかな。

 

本著では、イスラエルテルアビブの熱狂ぶりなども取り上げられている。Smartdotなどの電気自動車の急速充電スタートアップも有名。

https://kayoreena920.com/glance/

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58541700X20C20A4FFE000/

他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論(宇多川元一) を読んで

Newspicksが編集やっている本の中で一番面白い本だった気がするなぁ。

本著は個々人に固有で存在する「ナラティブ」にまつわる問題について、どうやって解決に近づけるのかを説いている。ナラティブとは、いわゆるモノの見方や考え方の言い換えで本著では考えている。どうやって解決すれば良いかがわからないならそれは技術的課題になるのだけど、そもそもなんで解決しなきゃ、とか何をとかが個人でずれていることを「適応課題」と呼ぶそうで、人と人との課題はこちらに全て属する。

本著では4つのステップでこの人との関係を解決しようと提案している。

1. 相手との溝があることを知る

2. 向こう岸を見渡す(相手のナラティブを知る)

3. 背景に思いを巡らす

4. 溝を渡ってみる

大概問題が起こった瞬間に4.を行おうと考えるのが仕事の常。悩んでいる当事者もそうだし、仲介する人間もそう。「じゃあ〜してみたらいいかな」と言って、解決策を提案するけど、みんなにとってピンとこないことが結構ある。だけどピンと来ていなくても、言語化できないことがほとんど。でもなんかむかっとしたり、違和感があったりするけど、ちょっと怖い。

少し時間を使ってでも、特に相手が当たり前だと進めているナラティブはなんなのか、その背景はなんなのか聞いてみようと思うことが誤解を解く鍵になる。また、著者は相手との共通利害・共通課題を見つけることが解決に向けて大事だという。

 

「読む」「聞く」「書く」「話す」の順で人間のインプットは深まっていく。ではアウトプットはというと逆の順序で、「話す」(頭出し)「書く」(まとめる)「聞く」(それを元に要点を洗い出す)「読む」(深ぼる)のプロセスを反復的に行うことが必要で、特にナラティブの違いは「話す」と「聞く」の間に落ち込みがち。誰もがわかる形で「書く」ことがとっても大事なんだろうなって、思う。

また下のブログにもあるけど、各に得手不得手があるのが当たり前。それぞれ自分がどのスキルが足りないのかを知らなきゃいかんね。僕は「話す」がマジで苦手。

 

https://note.com/sumichan11/n/n8f122f790467

 

https://globis.jp/article/7234

Googleの未来都市「IDEA」ようやく知る

トロントで住民に向けたスマートシティを提供しようというGoogleの構想がマスタープランとして提出されている。このコンセプトは、エストニアの情報管理の思想にも共通するのだけど、「2度と同じ情報を聞かない」という都市運営を企業が担おうとしている訳だ。

 

企業が担うことで、最先端のテクノロジーの恩恵を常に受けることができるし、最適化された、環境に配慮されたあるべき社会へのエントリーにもなるかもしれない。

問題は都市が住民のどこまで個人情報として受け取れるのか、というところだ。例えば、サンフランシスコにある「b8ta」というプロトタイピングショップが人気だと聞く。日本のスーパーや青山商事の店舗でもテストされているみたいだけど、客の目線や反応を売り上げ以外のフィードバック情報として取得して、陳列している商品の反応を可視化するようだ。

この取り組み自体は非常に面白い。だけど、街全体でこんなことされたらどうだろう?極論個人が特定できるくらいには解析できるのではないか?と不安になってしまうだろう。

 

サイドウォークラボは非常に野心的な取り組みなように思える。
だけど企業がこの部分を全て説明責任に答えるのはほぼ不可能なように思える。自治体は企業から独立した形で彼らの情報の取得について制限をかけなければならないよね。

 

日本でもデジタル手続法で基本方針が定められている。

https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/column/keyword/1215224.html

 

https://wired.jp/2019/07/05/alphabets-plan-toronto-depends-huge-amounts-data/

https://toyokeizai.net/articles/-/207826