OldLionの備忘録

年老いたライオンは錆びない。狩りを続け、振る舞いは日々深みを増していく。 いつまでも自分を忘れず、狩りを忘れぬライオンでありたい。 そんなライオンになるための日進月歩。

テクノロジー思考 お金の流れと産業の流れ

蛯原健さんの「テクノロジー思考」を読んでいるが、目から鱗で面白い。彼のアイデアは斬新なものではなく、東南アジアにいたら誰もが暗黙知として共有していたものを華麗に言語化したと言っていい。
読んでいる途中なので総論は別途まとめなければならないが、彼のインターネット化の先に関する議論が非常に面白かった。インターネットは成熟し、インターネットの外側、つまり実際の課題を解決するイノベーションに投資が集まる。アメリカではマネタリーベースが4倍に伸び、日本でも2倍に伸びるなかで、資金は過剰流動性を持っている。レガシーな産業を突き崩すイノベーションに金が集まる時代になった。
 
だが著者はもう2つの潮流に着目する。それが「アーバニゼーション」=都市化 と「ソーシャルインパクト」=社会問題解決型だ。テクノロジーが進展することでインターネットにさらされてこなかった地方の人々が都市への流入で、テクノロジーに触れることができる可能性が増えていく。そしてその技術の進展を社会問題と言われる部分へ使うことで社会問題の解決が投資対象になるというのだ。
 
隔世の感がある。以前大学時代では、チェンジメーカーやBOP投資、もしくはマイクロファイナンスなどのバズワードが、途上国の社会問題を解決する手段として議論され消えていった。日本では地方創生の取り組みが進んではいても、地域の有志が小規模な範囲で独自な事例を作りに奔走していた。だが、これが世界の金あまりの潮流の中で、今まさに着手されようとしている。発想は以前と同じで、将来のキャッシュのたねを見つけるものだとしても、大きな進歩だと思う。今まではCSRという文脈でさえも、課題解決に億劫さを隠しきれなかった大企業の方々も、今後は目の色を変えて課題解決に動き出すかもしれない。
 
資本主義の限界を、資本主義のシステムを使って変えていけるのが未来にあるならば、その課題に真摯に取り組んできた人が報われる社会になるはずである。それは素敵だと思うし、大学時代からその部分の理想だけは捨てないでよかったとリアルに思えたりする。