OldLionの備忘録

年老いたライオンは錆びない。狩りを続け、振る舞いは日々深みを増していく。 いつまでも自分を忘れず、狩りを忘れぬライオンでありたい。 そんなライオンになるための日進月歩。

佰食屋「売上を減らそう」(中村朱美著)を立ち読み

佰食屋の取り組みについて取り上げた本を立ち読みした。佰食屋とは京都市内で100食限定で提供するランチ営業を中心に行うステーキ店だ。今はすき焼きや肉寿司など、店舗の種類も増やしている。
この店舗には多くの特徴的な取り組みがある。
  • 営業時間は3時間半。
  • 100食限定で販売する。
  • 原価率は50%。素材は目利きをして、安くいいものを提供する。
  • 従業員にガツガツした人は雇わない。みんなで安心して働ける場所に。
  • 14坪など、小さな店舗。
この取り組みだけだと、特徴的な飲食店で終わりだ。だけど、この本で強調されているのは、売り上げをあげ続ける体制へのアンチテーゼだ。売上至上主義は、多くの弊害を生み出すことはずっと根深い問題になっている。最近ではかんぽ生命の契約者に二重支払いを意図的に行わせたり、高齢者への説明義務が果たされていない、ということで、生命保険を販売停止に追い込まれたのに、営業プレッシャーのせいでアフラック生命の乗り換えをさせる営業命令が出ているという。昔郵政民営化あとに身内などにギフトを買わせていたのもかんぽだった。少し前にはTOSHIBAでの営業が問題になった。
 
5年前くらいには、未来食堂といって、「あつらえ」=その日の気分で注文できる や「まかない」=食器を洗うなど労働すれば誰かに食事券をプレゼントできる という仕組みが話題になった。これも佰食屋と同じで、誰かとの協力や協調によって社会を成り立たせる、売上よりも関係を大事にする仕組みだ。お金を儲けるのにコツがいるように、人間同士が互いに協調して社会を成り立たせるためにもコツが必要である。
 
無理のない範囲で、愛着をもってもらう、これに尽きるのではないのかと思う。売上を伸ばすコスト削減のの代わりに、お客様や従業員がゆとりをもてる空間や仕組みを。売上ノルマを追わせる代わりにお客様がリピートしたくなる仕組みを考える。佰食屋でも、普通の社員が、店を大転換するアイデアを実現したりする。能力(ability)ではなく思いやり(Synpathy)、事業成績(commitement)ではなく愛着(Attachment)などが社会資本を中心とした事業における必要事項であり、価値の循環をもたらす必須の資質だと思う。
 
社会主義と資本主義は基本的に協調と差別という別々の論理に突き動かされている。資本主義の世にあっても、この協調の論理が差別化要素になるのだという意味で佰食屋の事例は新しい可能性を感じるなぁ。