OldLionの備忘録

年老いたライオンは錆びない。狩りを続け、振る舞いは日々深みを増していく。 いつまでも自分を忘れず、狩りを忘れぬライオンでありたい。 そんなライオンになるための日進月歩。

未来を変えるためにほんとうに必要なこと を読んで

未来を変えるためにほんとうに必要なこと」アダム・カヘン著を読み返した。
以前の謙虚なコンサルティングにも通ずる、合意形成の手法に対する本だが、面白いのはこれが集団での意思決定であるということだ。
 
まず、彼は力を前向きに推進する力、愛を同一性を保つベクトルであるとする。
愛なき力は暴力であり、力なき愛は無力である。なるほど、日本人は合意形成の方法を探求しようとしない。議論なれしていないから、誰かが声をあげたら同一性を重視して声をあげなくなる。だが、力を無視した愛はただの無関心であるという。
 
本書を通して、結局最適解を出すには「よろめきながら歩く」しかないと言っている。これは力が強くなったら愛を意識し、愛が強くなったらお互いに合意形成できていないポイントを洗い出す力のベクトルを精査していくことだ。
「システムが中心に近づくと悪魔が現れる」
「コンセンサスというものは、各人が事実との独自の関係を主張し、個性を保っている限り有効である。」
というように、例えば10人でコンセンサスをきづくというのはアホほど難しい。
 
カヘンが進めるのは「U理論」だ。「共センシング」「共プレゼンシング」「共リアライジング」、つまり、集団の中で今発生した問題を読みとき内的な問題を分析する、その中で各人がどんな役割を果たせるかを検討し、それをどうやって実現するかを検討し、アウトプットするのである。このプログラムの中で行きつ戻りつを繰り返しながら、愛と力のバランスを取った前に歩んでいく。だから、議論が終着点に向かっているかではなくて、全体としてこの3つの内的なプロセスが踏まれたかを検討することがファシリテーターの役割なのだ。
 
「集団は、メンバー構成の多様性とメンバーによる情報へのアクセスという条件がみたされた場合に集合知を発揮する」
 
と言われる。そのためには、「入れ物」=逃げ出すことが出来ない環境 が必要だという。つまり、絶対に意思決定を行わなければならない状況下で、どのような合意形成を行うかを検討すれば大いに復元力=レジリエンス の高い、複雑な状況に対応した意思決定ができるということだ。
 
粘り強い交渉や、合意形成が簡単ではないと思う場面はそう多くない。だが、海外に出ると合意形成のために時間が大いに必要になるし、意図的にそういう時間をつくっていかなければならない。そんなときに上記が役に立つはず。